ハルノコエヲキク


満月を三日ほど過ぎまして、柔らかな空気の中、四月に入りました。

例年ですと三月の中旬から下旬にかけて一度、最期の雪が辺りを白い世界へと戻してくれます。
今年は雪に代わって、黄砂による幻想的な日夜。春霞のようでもありました。

北海道の長い冬は終わり、厚い上着を脱いで身を軽くし、まだ少し冷たい風残るキラキラの空の下で、私たちの心は軽く 明るくなっていきます。


重たいモノを下ろしたい時、この湖まで車を走らせます。
霧の湖の前、朝日の湖の前、雨降る湖の前、落日の湖の前、そこに立ち、しばらく立ち、暫しの間、無の声に耳を澄まします。


15年前、友人がこの美しい湖で帰らぬ人となりました。

湖面に映るもう一つの空を眺めてから、気が済むまで眺めてから、大きく音をかけ、負けないくらい大きな声で歌い、千歳へと向かう木に囲われたヨーロッパの様な一本道を走り抜けます。
この間に、重たい荷物持ちは彼が代わってくれるように思います。

歌うたいだった彼は明るい人でした。


明るく、優しく、笑って、

それが一番。





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