漆黒の海


午後4時半、
思い立った

自分の頭で考えた出したことではなく、空っぽから聞きたいことがあると。
即、ノートと鉛筆、水とタオルとクッションを持って日本海沿岸を走らせた。
片道5時間弱、行く先はサロベツ原野に広がる海だ。あの、他には何も無い海だ。曇り空の海に微かに輝く夕日を見ながらひた走る。縦型の美しい北斗七星を見たことのあるあの海を横目に走り続けた。考えることを手放すために歌い続けた。この時刻から走り始めたら、到着は真っ暗な夜であることはどうでも良いこととして。真っ暗な大きな天塩川を渡る。車の全てのドアをロックした。昨夜の満月の光も星の瞬きも無い。多分目の前には日本海。パラパラと雨が落ち始めていた。思いもよらなかった雨と雷警報。この海の前で、空っぽから聞きたいと思っていた。空っぽは何を話すだろうと。車中で一夜を過ごし、朝日に照らされたいと思っていた。「帰ろう。」そう聞いた。安堵した。内陸へとハンドルを切り、北緯45度の原野を行く。怖かった。幾度か訪れて夜を過ごしたことのある海だけど、怖かった。電話が夫の声を私に与えた。そうして同じ海沿いを5時間、家路を辿った。

サッパリしていた。

午前4時、持って行ったノートに向かっている自分はサッパリしていた。
空っぽからどんな声を聞きたかったかわからないけれど、どんな声が聞こえるだろうと期待していたけれど、何もなくても幸せだった。満たされていた。サッパリと満たされていた。

日々、直さんの紙の中に身を置くことと、空っぽに出会う旅は、私に大切なものを与えてくれる。
そして日常もまた、愛おしいものだと感じています。


平和はわたしからはじまる




いつかの朝

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