心にあるもの

真っ白に積もった雪が解けました。店先の紫陽花たちを冬支度のために刈り込みました。店の周りの草花の事を一人でしていますと、ふっと込み上げる思いがあります。

店の並びに住まわれておられましたご夫婦。ご高齢になられて娘さんと住まうため二月に居を移されました。開店の時よりとてもお世話になりました。私は親しみを込めまして、"三浦さんちのお父さんといくちゃん"そう呼ばせていただいておりました。80歳を過ぎても毎日お元気に一輪車を押し、雪かきスコップを担がれて、一日中一年中町内の見回りに。"んーんー"という鼻歌が聞こえてきますとお父さんのお帰りです。玄関先には小さな椅子にちょこんと座ってお花をお世話するいくちゃんのお姿。路地のその奥、学童保育の子供たちとのやりとりが聞こえていました。のどかな光景がいつも当たり前にありました。十二年の月日の"いつも"を一緒に過ごしました。今年の夏、お父さんは旅立たれました。

店先の冬支度を済ませました。
耳の奥にあの鼻歌を聞きながら…
頭に積もって解けた雪、今年最後のこの美しい紫陽花を、愛おしい時間を、染紙に添えて…


0コメント

  • 1000 / 1000