ただ…


夏の終わり頃、
5年ぶりくらいに、大熱を出した
風邪でも病気でも、もちろんコロナでもない
それでも大熱を出した
わたしは観念して眠り続けた
わたしのココロとカラダは、大熱を出すことによって観念させ、幾日も思考や行動を休ませた

眠っては目を覚まし、ぼんやりしては眠りに落ちる
それを幾度もくり返した

天井から吊るしたあかりのための薄い紙
1メートル × 2メートルのその紙を、竹ヒゴの輪っかにくるりと巻いてピンチで留める
眠るベッドの真上に揺れている

手漉きの生成りの白い海、ところどころ、
泳ぐように染め描かれて揺れている
窓を開けて、
夏の風と夏のにおいに揺れている

熱でぼんやりとした頭、
眠りから覚めてぼんやりとした意識、
揺れている… 
揺れている…

それを見てた
揺れているのを、
ただ、ただ、見ていた
そして、その下で、ひたすら眠った


あの夏の終わり、
かけがえのない時間をもらったように思います。
自らそうしようと思って得ることのなかなか叶わない時間、そのように思います。
観念するほどの大熱を出してくれたように感じられたから、私は私に感謝しました。
私の中が一度空っぽになって、また宝物が詰まったように感じています。


ただぼんやりと眺めた光景、
ぼんやりと浮かんできたあの感覚、

忘れないだろうな…


KAMI NO MEGUMI

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