建築さんとの仕事

finished 


本来なら、現場において貼り込みを済ませて欲しいと建築さんは思うことでしょう。
多くの業者さん職人さんが少しでも動き易いようにと、不備が無いかと、幾度も確認や調整などを繰り返されながら迫り来る竣工期日に向かって現場を整えていかれる。
そのような中、和室の紙貼りには他の仕上がりが見えてきてサッパリとした中で仕事をさせていただけるというご高配を賜り、壁と天井貼りを一人で行うための現場での作業時間に、三日間をいただいた。
壁と天井の他、床から天井までの壁一面となる押し入れ。そちらに取り付けられる大きな襖二枚と、廊下からの和室の入り口となる、やはり床から天井までの背の高い引き戸。そして、大きなパネルとなる土台。納期迫るタイトなスケジュールの中、無理を言って、建具屋さんから現場ではなく、一度店へ届けていただけるようお願いをした。その部分、その部分、とそれぞれに思いの込められた建築さんこだわりの、洗練されたオリジナルの取っ手一つ一つが各建具に在る。その取っ手を含めた "キャンバス" に、施主様自ら選ばれました染描紙を用いて大きなアートに仕立てる。
運ばれて来た建具の、想像以上に大きく重たいキャンバスに悪戦苦闘、火事場の馬鹿力ももうすでに限界に近い。加えて連日の猛暑。踏ん張る足にも持ち上げる腕にも力が入らない。だけどなんてありがたいのだろう。まだこんなに頑張れるだなんて。
そして、こんなにも嬉しいだなんて。

紙の持つおおらかさ。そのおおらかさに助けられ委ねられて仕事を進めることが叶う。
思うように焦ることなく仕立てられるよう、そしてそれが良い仕事へと繋がり、喜び満ちることを改めて示し導いていただいた建築さんのご深慮に感謝いたします。

紙に触れていること。
この手を使って染描紙を仕立てること。
お渡しすること。

ただ、ただ、嬉しいが溢れて、刷毛を置くことが出来ました。








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