KAMI NO MEGUMI
紙のめぐみを始めた時、紙のための、お客様へのための、「手」を持ち合わせていませんでした。
開店のために用意できたことは、紙舗直の直さんの紙をおくことだけでした。それは紙のめぐみという店のすべて、ですのでそれでよいのですが、この紙を持ってしてどのように生きていきたいのか、どこへ向かって歩いていくのか、ハッキリした目標などは何一つなかったのでした。
ただただ、生きているこの素晴らしい紙たちと生きていたい。この紙たちと一緒に何処までも行ってみたい。この紙たちを人との間に置いて繋がっていきたい。私が何も知らなくても、直さんの紙と一緒ならそれが可能だろう、そう思っていました。その思いを今も抱いています。
この世になかった「紙のめぐみ」という店が、地球上に、誰かの意識の中に、存在し始めたのでした。
紙のめぐみの目を通した紙と手を、少しずつ必要としていただけるようになりました。
19年の間に、お客様が紙のめぐみを育ててくださいました。紙を扱う手となるよう機会を与え続けてくださいました。
現在、2、3か月おきにロサンゼルスへ向かう自分がおります。
直の紙「染描紙」と刷毛と「手」を携えて。
一歩一歩、歩いてきました。
今ここにいます。
「自由に生きなさい」という思いやりの中にいられると、面白いことが起こってきます。想像を超えてきます。
きっとここからの一歩一歩にも何かがあるでしょう。
「楽しいね。」
そう歩いていきます。
直さんの紙たちはライヴです。生きています。
生きているんです。
紙の白い命には
「自由に生きなさい」という
思いやりがある
直
穏やかさを
楽しさを
優しさを
しあわせを
愛を感じることを
どんな出来事にも、捉えられる二つの側面があり、
そのどちらを意識におくか
それを選ぶことができる
良い気分となる思考
そうでなくなる思考
生きているよろこびを
紙の白い命の上に生まれた
どこまでも心を広げてくれるような刷毛ストローク
紙の白い命の上に生まれた
それは人生の春の光
直の紙「染描紙せんびょうし」の上で繋がる
私たちの心と心
豊かなる心
心に生まれた新しい気持ちを大切に・・・
黙祷
心をおだやかに保つ
静かに、ゆったりと落ち着いて
そうして深くなる呼吸に耳を傾け、力を抜き、身を委ねる
そうすると、体の奥の方から満ち満ちるあの感覚へ
しあわせという名のあの場所へと辿り着く
友は、子供のころに見たその夕陽を思い浮かべると辿り着くことができるそう
私は、夏の夜の虫の声
静かに思い、体中に羽音をよみがえらせるといつでもあそこへ行くことができる
行く、辿り着くというより、『ここにふたたび』という感覚
あたたかい気持ちはここにあったという感覚
昨年の暮れ、3週間ほどロサンゼルスで仕事をしていた時です。
予定よりも予想よりもかなりハードスケジュール、ハードワークで、多く細かな紙貼りでのお仕立てを目の前にした夕刻のこと。
ギャラリースタジオの中ではありますが、あちらでも季節は冬
頭はフリーズしたまま、黙々と手を動かし、貼ることに没頭するこの耳に聞こえてきました。
Ririririririri Ririririririri…
そう、秋の虫の声です。
体中によみがえります。あのしあわせな愛の感覚です。生命のエネルギーと呼べるような、源ソースと呼ばれるような、そういったしっかりと安定した活力と繋がっているような感覚です。
大丈夫だよ。心配ないよ。そう言われているようでそんな中でも自分を保つことができました。そうして普段の3倍速くらいに手だけが勝手にしあわせに動いてくれました。
今 目の前で起きている現実、現状から少し離れて、耳を、心を澄ます
眠ってしまうのもいい、猫を撫でるのも、しあわせなことを妄想するのもいい
思考することを休ませて
そうして自分の気持ちがほんの1ミリ軽くなるところへ
そこから広がる、次へと繋がる、いつかきっと
忘れないで
それはいつでもすでに叶って待っています。
2024年12月31日
紙舗直 直さんの『新月言』より
『 平和 祈り続ける 』
わたしの中をいつも平和に